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定理の名に価いする一般的な文章をつくりだすにはどうすればいいでしきりか。
34帰納法一つのやり方は、帰納法を使うことです。
この方法を使ったやり方をつぎに示しましょう。分割の仕方を飛+tl飛の式の中の3と4と5の割合にすれば、直角三角形が出現する。
式の中の5と12と13の割合にすれば、直角三角形か出現する。
縄の分割の仕方を1十にt=に飛の式の中の7と24と25の割合にすれば、直角三角形か出現する。
式の中のaとみとrの割合にすれば、直角三角形か出現するであろう。
これは推論ではありません。
むしろ推理あるいは推定といったほうがいいでしょう。
だから∴でないものを使いました。
しかしまえに何回も登場した後件肯定のタイプの推理ではなくて、それとはちがったタイプの推理です。
そして昔からこのタイプの推理を特に帰納法と呼びました。
ところでこの帰納法ということばは演えき(鐸)法ということばと対立的に使われました。
しかし実をいえばこの演えき法は推論とおなし意味です。
話か少しややこしくなってきましたので整理して表をつくっておきましょう。
ついでにことばの意味の方も説明しておきますと、演えき法とは、結論を前提だけから、論理学の教える規則にしたがってひきだす手続きのことでして、演えきの「演」はおなじ発音をもつ「延」とおなじ意味で、巻いてあるものを伸ばすことです。
また「輝」の方はなん重にも巻いてある糸まりの糸口から糸をひっぱり出すことです。
いずれにせよ、すでに前提の中に暗々裏に含まれているものを、明るみにさらけ出すという意味で、まえに挙げた推論とおなじことになります。
つぎに帰納法ですか、これは個々の経験的な事例を集め、そこから、一般的な結論をI気にひきだすという手続きです。
この「一気に」という点が帰納法の大切な特徴です。
推論や演えきでは、結論のひき出し方はとても慎重ですが、そのかわりその結論はすでに存在していた内容をはっきりさせただけで、情報量そのものがふえたわけではありません。
しかし帰納法によってひきだされた結論は、前提にはなかった要素をあたらしくつけ加えるのでして、この場合は情報量が増大します。
しかしそうした結論を出すためには、前提と結論の間に横だわっている溝を「帰納法的飛躍」といわれるやり力で「一気に」跳びこさねばならないのです。
そしてそこに帰納法のもつ生産性・創造性があるとともに危険性も存在するのです。
こう見てきますと、なぜ帰納という耳なれたいことばか作り出されたのかが感じとれるでしょう。
帰納の「帰」は「万物が一つに帰する」という古代中国の文句からきたもので、「納」も「多くのものをI物の中におさめ入れる」という場合の「納」です。
そしていまの場合ここで万物とか多くのものというのは、個々のことからについて述べた文であり、コ」とは、一般的なことがらについて述べた文のことなのです。
ただし帰にも納にも特殊から一般への飛躍を匂わす意味が含まれていないのは少し残念です。
このように帰納法には冒険的要素があり、したがってその結論は「~である」ではなくて「~だろう」となります。
つまりその点では、後件肯定の場合と同じく、その結論には∴を使わねばなりませんでした。
だからこれら二つは表3で示されたように推理の中に入れられました。
そしてさらにこうした推理全体が、∴を使う推論もしくは演えき法と対立させられたのです。
完全枚挙の帰納法の限界もういちどピタゴラスの定理にもどりましょう。
さっきの帰納法において、その結論がでました。
そこで逆にこの一般的文章を前提とすれば、そこからは3、4、5の割合の場合も、5、12、13の場合も7:25の場合もすべて演えきできます。
しかし、そうした個々の例からは一般的なものを含む文を演えきできず、ただできることといえば、帰納だけなのです。
このように帰納は推論ではなく、推理でしかありませんが、帰納は帰納でも、完全枚挙的帰納の場合、その結論は一〇〇パーセント信頼の置けるものとなります。
たとえはなりたちます。
一〇〇以下の三つの自然数について叱十―=ふとなるようなトリオ(三つ組)をしらみつぶしのやり方で探してください。
先に挙げた例もそのなかに含まれますが、もちろんそのほかにもいくつかあります。
そしていくつもあり、それ以上はないということは、ある程度時間をかければみつけだすことができます。
もっと短時間でみつけようとすればパソJンを使えばいいでしょう。
しかしながら自然数は一〇〇以下というわけではありません。
無数にあります。
いや無限にあります。
ですから有限の時間内に、しらみつぶしの方法で調べ尽くすことは原理的に不可能です。
もちろん超大型コンピュータでも不可能です。
完全枚挙の帰納法によるピタゴラヱの定理の演えきが不可能なことにたいする理由にはもっと強力なものがあります。
いままでa、b、cは自然数にかぎってぃましたが、実は小数でも分数でもかまわないのです。
たとえばいろんな場合がそうです。
しかしこのように小数や分数をも認めるとなると、こんどはたとい一〇〇以下と限っても無限個のケースについて確かめねばならないことになります。
ましてや一〇〇以下という条件をはずせば、もっとたいへんなことになります。
さらに困ったことに、ピタゴラスの定理は無理数がまじっていても成り立つのです。
そこで無理数のことまで考えてのしらみつぶし作戦ということになると完全に絶望的です。
無理数の個数と比較することになれば、ふつうに「無数の星」とか「無数の砂粒」といっている場合の個数は、初めから勝負になりません。
示しておいたようにひじょうにたくさんの個数といってもいろいろの段階があります。
1、2、3、……といった自然数は一列に並べておいて一番目、二番目、三番目といったように番号を付(つ)けて算(かぞ)え上げることが可能です。
また少し工夫すれば分数でもそうするCとができます。このようにして帰納法によるピタゴラスの定理の証明は不可能だということかわかりました。
ですからひとびとは数値的な方法でなしに幾何学的な方法や代数的方法でその証明をやろうとしました。
この二つの方法だと、個々のケースをあつかうといった数値的な方法とちかって、いくぶんI般的なとりあつかいかできるからです。
こうした方法でおこなわれた証明法は数えきれないほどあります。
しかしもっとも有名で、そしてもっとも優れたものは紀元前三〇〇年頃のユークリッドが『幾何学原論』の中でおこなったものです。
その証明法に使われた古い図をそのまま出しておきましたか、そこで使われている記号はもちろんギリシア文字です。
ユークリッドの証明法は、たいていの数学の本に載っていますから、それを見てください。
ところでユークリッドのこの証明法のどこがいいのでしさか。
それは、この証明法が典型的な演えき的方法をとっているからなのです。
いやむしろ公理論的な方法をとっているといった方がよいでしここで少しばかり公理論的証明法について説明しまし。
う。
まずいくつかの公理をきめます。
公理とはだれもが文句のつけようのない天下公認の理を述べた文という意味です。
「同じものに等しいものはまたお互いに等しい」とか『全体は部分より大きい』といったわかりきった文がその例です。
ユークリッドの『幾何学原論』ではそうした公理か全部で一〇個あります。
そしてこのたったI〇個から、なんと四一七個の定理が演えきされているのです。
そしてピタゴラスの定理もそのなかの一つにすぎないのです。
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